好きより、もっと。
「藤澤君、アミちゃんのこと、そんなに心配?」
「え?あぁ・・・まぁ」
「アミちゃんは大丈夫だよ。大崎君が本気になったところで、どうにも出来ないと思うよ」
「別に、俺は・・・」
「藤澤君がどうにか出来ることじゃないの。アミちゃん自身が自分で何とかしないといけないことだから」
時雨さんのいうことはもっともで、俺にアミの気持ちをどうこうする権利など無かった。
ましてや。
俺がアミの気持ちを縛り付けることなど出来ないと。
それも理解していた。
それでもアミには拓海を見ていて欲しいと思うのは、俺の我が儘なんだろうか。
黙り込んでしまった俺に、時雨さんは『そろそろ準備しないと』と小さく声を掛けてくれた。
時雨さんが着替えなくてはいけないことを思い出して、俺は慌てて部屋を出る。
廊下をイベント会場に向かって進んでいると、向かいから歩いてくる人影に気が付いた。
「お疲れ様です。今日はよろしくお願いします」
「櫻井さん・・・。こちらこそよろしくお願い致します。申し訳ありません、急に人員を手配して頂くことになってしまい・・・」
「とんでもない。多分、自分からやりたいって言ったんですよ、アイツは」
イベント開始まで時間がないこともあって、廊下で簡単に挨拶を済ませる。
今日は休みだったらしく『息子を迎えに来た』とのことだった。
ついでに息子と一緒に現場を見学していく、というもんだから、夫婦そろっての仕事馬鹿は相変わらずのようだ。