好きより、もっと。
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「お疲れ様でした。本日は本当にありがとうございました」
「いいえ、こちらこそ。フォローありがとう。おかげで安心してMCに専念出来たわ。さすがだね、藤澤君」
「とんでもない。時雨さんのMCこそ、さすがでした」
「お世辞まで上手くなっちゃて。でも、ありがとうございます」
イベント終了したのは夕方の五時。
撤収作業を含めるとかなりの時間になってしまうので、スタッフを先に解散させて時雨さんの見送りをしていた。
久しぶりの現場とは思えない良く通る声でのMCは、出店会社からも太鼓判を頂き、その後の重役対応までこなしてくれた時雨さんには頭が上がらない。
帰り際、我が子を抱きかかえた櫻井さんも来てくれて、一緒に出口を目指していた。
「望、いい子にしてた?」
「うん。パパといっしょに、いっぱいキカイみてたよ」
「そう。楽しかった?」
「うん。でも、ママもいっしょがよかった」
「おいおい!望、それはないだろう」
「あら、嬉しい。圭都よりもママのほうがいいわよねぇ」
「時雨まで・・・。俺、泣くぞ」
微笑ましい家族の会話に、俺と未央もこうして子供を育てていくのかな、と。
そんな想像をしていた。
俺の目線に気が付いた櫻井さんがニヤリと意地悪く笑い、その顔は人をからかう顔だと知っていたので、俺は思わず身構えた。
呆れたように時雨さんは小さく溜息を吐いて、櫻井さんの腕からひょいと我が子を抱き上げた。