好きより、もっと。
会社携帯にも個人携帯にも電話を入れているのに出ないなんてことは、とても珍しいことだ。
余程のことがない限り、俺の電話に出ないことなんてないのに。
三度目の呼び出しをすると、すぐ着信を切られてしまった。
時間はもう八時十分を過ぎていて。
搭乗アナウンスも最終呼び出しの時間も過ぎているような状態だった。
突然電話を切られたことに多少の苛立ちを感じたものの、苛立ちよりも心配の方が勝った。
――――――タクと何があった?――――――
いつもは仕事の電話かもしれないと思って、驚くほど早く俺の電話に出るアミが電話に出ない状態になるほどに。
何があった?
タクとの時間に俺との電話で水を差されたくない、という気持ちがあったのなら、携帯の電源を落とすはずだ。
それを鳴りっぱなしの状態のままにしておくのはどうしてだ?
かろうじて留守電に繋がったのでメッセージを残す。
いつも通りのぶっきらぼうな物言いで伝えたかったのに、自棄に優しい、心配を含んだ声になってしまった。
頑なに俺の電話にさえ出られない何かがあったのか、と。
そんなこと起こる訳がないと信じている自分もいれば。
800kmも離れてしまった双子の兄の感情を読み取ることが出来ない、と想う自分もいる。
切られた電話に縋り付いている暇はないと考え、タクの電話番号を探す。
呼び出し音を聞きながら、『アミに逢えたけど余計寂しくなった』と返答してくれるであろう兄を想った。
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