好きより、もっと。
「わかってるなら、泣かせな――――――」
「我慢するな」
言葉の途中で私の涙は零れてしまい、もう大崎さんの顔さえ見えない。
私の手をやっと解放してくれたかと思えば、その武骨な手は私の頭の上に優しく置かれていた。
ぽんぽんと幼子でもあやすように私を撫でるその人の手は、とても温かい。
ここが空港という場所で、尚且つ到着ロビーという賑わう場所では、泣いている私がさぞ目立つことだろう。
そんな私を気遣うような仕草でそっと肩を叩き、私に歩くよう、大崎さんは促してくれた。
しゃくり上げそうな自分の呼吸を何とか整えながら自分の足元だけを見つめる。
ポタポタと落ちる自分の涙が、まるで降り始めの雨のように見えた。
向かう場所はどこかわからないけれど、外の気配がしていたので駐車場なのだろう。
駐車場までのみちのりは長く、私はフラついて真っ直ぐ歩くことさえままならなかった。
優しく溜息を吐くその音は私を心配している証拠で、大崎さんはそのままそっと手を引いてくれた。
手を引く前に渡された男物のハンカチは綺麗にアイロンがかけられており、この人の身近にはアイロンをかけてくれるような人がいるんだな、と思って羨ましくなった。
近くにいて相手のために何かできるというのは、それだけで幸せなことだ。
そんな当たり前を持っている大崎さんも、その彼女も。
私にはとてつもなく羨ましい存在だった。