好きより、もっと。
車のキーを取り出してロックを解除すると、私を後部座席へと押し込む大崎さん。
促されるまま座るとすぐに扉を閉められる。
閉ざされた扉に安堵して、私は身体を畳み込むように小さく蹲ってしまった。
我慢していた嗚咽を抑えることなく吐き出すと、今まで以上に涙も溢れてくるような気がした。
きっと、化粧もボロボロになってしまっているのだろうけれど、今の私にそんなことを気にしている余裕などない。
今の私に分かることと言えば、この閉鎖された空間の中で誰にも見られることなく泣いていいのだ、ということだけだ。
「――――ふっ・・・うぅ・・・」
泣き喚くほど無防備にもなれず、かといって泣き止むほど落ち着くこともなく。
息が苦しくなって喉も乾く。
それでも溢れて来るこの感情を、自分でも持て余していた。
私が蹲っている間、大崎さんは一度もその扉を開けることがなかった。
後部座席の窓から大崎さんを探してみると、運転席のドアにもたれかかったまま立っていた。
その後ろ姿は私を気にしている素振りなんてなかった。
そのことが私をより一層安心させて、涙の量が増していく気がした。
何度もタクの名前を呼ぼうとして。
でも大崎さんに、自分が縋る様にタクを呼ぶ声を聴かれたくなくて。
その度に声とも嗚咽とも取れるような音が、自分の口から洩れていった。
拓海。
どうして。
逢いたいのに、怖くて逢えなかった。
こんなに苦しくなるなんて、想いもしなかったのよ。