好きより、もっと。
「何・・・?お前、双子なの?」
「はい。一卵性双生児なので、瓜二つですよ。ほぼ同じ顔です」
「マジかよ・・・。お前みたいな顔が二人とか、苦労してそうだよな」
廣瀬さんの口から最初に出てきた言葉は『苦労してそうだよな』という、俺達を心配してくれる言葉だった。
俺やカズの顔立ちは、自分で言うのもなんだがかなり整った作りをしていて、表情がない時は精巧に作られた人形かCGゲームのキャラクターのように見えるらしい。
そんな俺達は羨望や妬みの対象となることが多く、誰かに心配や同情をしてもらう機会は貴重なものだった。
そんな言葉をくれる廣瀬さんだからこそ、俺はこんなにも心を許し『カズに会わせてもいいか』とまで思うことが出来たのだろう。
そんなことを考えていて、ハタ、と思考が止まる。
カズに会わせるということは必然的に未央にも会わせるということで。
勘の鋭いこの人が、未練はないとはいえ、とても大切に想っていた女の子の存在に気付かない訳がないのではと思った。
思考が止まったまま廣瀬さんの方へ目線をやったのが間違いだった。
呆けた顔をしていたはずの廣瀬さんが、俺の顔を見てニヤリと笑う。
それだけで良からぬことを考えているのが透けて見えるというのに、深く笑った廣瀬さんは『そんなこと考えてない』というように爽やかに笑った。
最低だ。
なんでこの人はこんなに鋭いンだよ、ったく。
「お前、弟『夫婦』って言ったよな?」
「そうでしたっけ?」
「とぼけんな。楽しみだな、その嫁さんに逢うのが」
未央にだけは逢わせたくないと思いながらも、既に了承してしまったことを覆すわけにもいかず。
大きく溜息を吐いて、カズ達が来るのを待つしかなかった。
溜息を吐いた俺を見てケタケタと楽しそうに笑う廣瀬さんを、恨めしい気持ちで見つめていた。