好きより、もっと。
俺達兄弟は、生まれ持った自分の顔の良さを自覚している。
それは決して見下すために自覚をしたものではなかった。
集団の中に溶け込むには整い過ぎた容姿であり、この容姿は異性からの『好意』の代償に同性からの『敵意』を向けられてしまうものだと身を持って知っていた。
そのせいか、俺達は異性に対してある程度の防御壁を持っている。
見た目に惹き寄せられた女達をある程度の距離までしか近付けることをせず、誰にでも優しく平等であろうと振る舞ってきた。
同性に対しては嫌味なく、自分がモテることを自覚した上で必要以上に謙遜しないように立ち振る舞ってきた。
そんな俺達は、気付けば人との距離の取り方がとてつもなく上手くなっており、それと同時に簡単には心を許さないような人間になっていた。
便利でありながら非道く寂しい習性を分かり合えるのは、世界でたった一人、自分の片割れだけだと知っていた。
「本当は朝イチの飛行機で行く予定だったんだけど、アイツの現場でトビあって。現場出たのが十時過ぎだから、何とか十二時の便に乗れたか、十三時の便にしたか」
『飛行機で一時間半と家まで来るのに一時間程度。合わせて二時間半ってとこか』
「あぁ。十四時半か十五時半には着いてるはずなンだよ」
『十四時半か十五時半・・・』
タクが何かに気が付いたように息を呑む音がした。
まさか、と虚ろな声で呟くその小ささに悪い予感がして、俺は何があったのかを聞き出した。
そして、それは最悪の事態だった。