好きより、もっと。
多分。
いつでもアミに逢える距離にいて、いつでも誤解を解ける状況にあったなら、俺はコイツのことを放っておくのだろう。
これは二人の問題だ。
俺が口出しをすべきことではないし、二人で解決しないと意味がないことだ。
わかっているが、ちらつく自分の上司の陰に大きな不安を感じているのも事実だった。
俺に宣戦布告をしてくるということは、確実に本気になっている、ということだ。
今日だって、俺からアミを攫っていったのはあの人だった。
これはタクを不安にさせるだけなのかもしれない。
コイツの不安を煽ったところで、何が変わる訳でもないかもしれない。
それでも『伝えない』という選択肢は浮かぶことがなく、それよりも俺と同じ思考で物事を考えるコイツなら、俺と同じように危機感を感じてくれるに違いないと思った。
「拓海の意見に、俺も同感だ。アミはあのままじゃダメだ」
『お前でもそう思うんだな。しょうがねぇな、アイツ』
「でもな。今はそんなこと言ってる場合じゃねぇよ」
『カズ・・・?』
「すぐに飛んで来れねぇお前と、ただの同僚の俺に出来ないことを出来るヤツが近くにいる今は、そんなことに言ってる場合じゃねぇよ」
『アイツか?アミとお前の上司だろ?』
「お前・・・大崎さんのこと知ってンのかよ」
『前に一回、電話口でアミのこと呼び捨てにしてた。お前の会社の下でアミを待ってる時も、自棄に勝ち誇った顔で俺のこと見やがった』