好きより、もっと。
「こんなんじゃ意味ねぇよな」
「大崎さん・・・」
「俺はお前がただ欲しいわけじゃない。こっちを向いて欲しいんだって、お前に触って本気で想った。ただ無理矢理抱くのは簡単でも、空っぽのお前を抱いても虚しいだけだ。今まではそれで良かったんだけどな」
それは今まで散々遊んできた人の発言で、この人がそれ以上の関係を望んでいる一番の証明のような言葉だった。
目を逸らすタイミングを失った私は、ただ私を見つめるこの人から視線を外すことが出来ない。
揺れる瞳が私を映してる。
一人ぼっちで置いていかれた子供の様に不安な顔をしているこの人を、非道く傷付けてしまったことを実感した。
それと同時に。
大崎さんが私の知っている大崎さんであることを実感して、無意識のうちに涙が溢れてしまった。
怖かった。
油断していた自分が悪いとわかっていても、怖かった。
私の言葉を聞いてくれない大崎さんが、とてつもなく怖かったのだ。
「悪かったな、怖がらせて。お前を泣かせるために、こんなことがしたかった訳じゃない」
「・・・ふぇっ・・・、うぅ・・・っ」
「よしよし、落ち着け。俺が悪かった。もう何もしねぇから、とりあえず中に入ろう」
肩を抱いてくれるその腕は、私の知っている上司の腕だ。
けれど、いつもよりも優しさを帯びたその腕は、昨日までの腕とは別のものだと分かる。
この人の本気が伝わる感触に促されて、リビングへと足を向けた。