好きより、もっと。
そして、ふと気付く。
自分で切った覚えのない電源に。
不思議に思いながら携帯を起動させると、少ししてから物凄い量のアイコンが立ち上がった。
着信、メール、留守番電話など、ありとあらゆる連絡手段のアイコンが主張をしており、一つ一つ開いていく。
そこには、拓海の必死さが滲んでいて、それだけで拓海を信じる理由に出来ると想った。
無意識に笑った私を見て、現実に引き戻すかのように大崎さんが私の手を引く。
冷たい眼差しをしたその人には、優しさなんて一欠片もないような気がして背中がゾクリとした。
「そんなに嬉しいか?カズの兄貴が心配してくれて?」
「嬉しいですよ。でも、どうしてタクだと分かるんです?見てもいないのに」
「わかるさ。昨日テーブルの上で震えてたお前の携帯の電源を切ったのは、俺だからな」
「・・・ご迷惑をおかけしました。随分、うるさかったですよね」
なんて勝手なことを、と声を荒げるのは簡単だ。
けれど、声を荒げて感情を剥き出しにすることは得策ではない気がして、静かに感情を押し込めた。
不自然に感情を抑え込む私を見て、私の手首に少しだけ力を加える大崎さん。
その強さに目を向けることなくただじっとしている私を見つめて、フッと優しく息を吐き出した。
驚いて目を上げれば、いつも通りの優しい顔をした大崎さんがいて。
紛れもなく『上司』の顔をして私を見つめていた。