好きより、もっと。
『亜未?』
優しい声。
その声を聴いただけで自分の涙腺が緩むのが分かる。
ただ名前を呼ばれただけなのに。
好きだ、と告げられたように嬉しいなんて。
「タク・・・、ごめんね。昨日、電話に出れなくて」
『俺こそ。アミも電話くれただろ?』
「うん。でも・・・繋がらなくて」
『悪い、カズと電話してて。・・・聞いたよ、全部』
何を、とは聞かなかった。
カズと電話をしてたってことは、タクは何もかも理解してるってことだったから。
だから、私がタクに質問する必要があることも分かってしまった。
タクは私に無理強いしたりしない。
それは私のことをとても尊重してくれている証拠であり、私が訊きたいと想った時に訊いていいからだ、ということだ。
けれどある意味で、『私が訊かなくてはいけない』という強制力があることでもあった。
『無理強いはしない』と言いながら『自分から聞かなくてはいけない』という矛盾。
そんな矛盾もタクは沢山持っていて、私はそれをとても人間らしいと感じていた。
そいういタクを好きになったのだから、私はタクの気持ちに応える必要があるのだ、と知っていた。
小さく息を吸う。
何度も上下する自分の胸に手を当てて、休憩室の窓をじっと見つめていた。