好きより、もっと。
『・・・ごめんな』
弱気で、優しくて、不安そうな声がする。
柔らかく柔らかく呼びかけてくれた、タクの声。
一言でも、一呼吸でも声を漏らしてしまえば、この止まりそうにない涙に気付かれてしまう。
必死に息を殺して、それでもタクの伝える声を聞き逃さないように耳に意識を集中させていた。
『そんな風に想わせるくらい、不安だったんだな』
「――――――っ」
『でも、嬉しかった。逢いに来てくれたんだって、分かっただけで。亜未が心底逢いたいと想ってくれたんだって』
「――――――っっ」
『俺も同じだ。逢いたいと想うのは、お前だけだ。亜未にしか、そんなこと想わねぇから』
「――――――っ・・・、ズルイ。拓海の・・・バカ」
『やっと聴こえた、お前の泣いた声。いつでもそうやって聴かせろよ。見えねぇンだから、せめて声くらい寄越せ』
恥ずかしそうに笑う声がする。
その奥に嬉しそうな声が潜んでる。
拓海が、私にしか使わない声で、私にだけ向ける笑顔を向けているのが分かる。
あぁ。
こんなに簡単なことだった。
ただ、拓海に向かって『寂しい』『辛い』って泣いて電話をするだけでよかったんだ。
そうすれば多分、色々なこと乗り越えられるって分かった。
拓海が、私のことを本当に大事にしてくれてるって、わかったから。
仕事のプライドがそうさせるのが、やっぱり最小限の声しか出せないけれど、泣きながら話している私が新鮮らしく拓海は笑った。
嬉しそうに響く声に安心してしまった私は。
涙が止まるまで責任持って電話に付き合って、とタクにせがんでいた。