好きより、もっと。
「だって・・・、拓海が電話に出てくれなくて嫌だったから・・・。ふて寝するしかないじゃない」
『やっぱりな。でも、電源くらい入れとけよ。普段、電源切らない亜未が急に電源落としたら、心配する』
「うん。今度からは、どんなにうるさくても切らないよ」
『うるさいのは俺だけのせいじゃねぇよ』
「ふふふ、そうだね。うるさくならないように、ちゃんと取るよ。タクの声、聴きたいから」
『そうしてくれ』
優しい声で私を包んでくれる拓海。
この人を裏切ることなんて、天地がひっくり返ったって有り得ない。
でも。
この人を大切にしたいと想えば想うほど、大崎さんのことを伝えたくないと想った。
私が一瞬でも大崎さんに縋ってしまったという事実を伝えることは大切なことかもしれないけれど。
拓海が知らないことをわざわざ伝えて、一人で抱えさせるのも違う気がしていた。
やましいことなんて何一つ無いけれど、真実を全て伝えることが誠意ではないと、そう想う。
自分が楽になるためだけに、拓海に厭な想いをさせることはない。
この罪悪感は、私一人で抱えて行くべきものだと想うから。
この罪悪感を吐き出すことが出来るのは、次に拓海に逢った時だけだと。
そう、決めた。
『そういえば、会社に行く準備しなくていいのか?』
「え・・・?あぁ、もう会社」
『はぁ!?早すぎるだろ!?』
「・・・寝れなかったの」
『え・・・』
「不安で、怖くて。寝れなかったの」