好きより、もっと。
嘘じゃないよ。
拓海がいないと、こんなにも不安。
拓海なしじゃ冷静な頭で考えることも出来ない程、こんなに大切だと想うから。
――――――拓海に伝えてラクになるのは、違う――――――
『・・・そうか。ホント、ごめんな。今日、帰れるなら早めに帰れよ。無理すンな』
「ん。タクも、無理しないでね」
『あぁ。でも、無理するためにこっち来てるからな。出来る限りのことはするさ』
仕事に対していつも真剣なタクは、やっぱりとても素敵だと想う。
そんなタクをいつだって応援してる、と言葉には出来かったけれど、小さく笑っただけで伝わったようだった。
なんとなくお互いに電話を切ることが出来なかったが、タクの出勤準備の時間が迫っていたので二人で柔く笑って一緒に電話を切った。
通話が終わった、まだ点灯したままの携帯画面を見つめて、少しだけ苦しくなる。
休憩室のベッドにダイブして、小さく『ごめん』と呟く。
出勤前の朝六時。
ツーコールで出た恋人は、寝起きとは思えないはきはきとした声をしていた。
もしかしてずっと待っていてくれたのでは、と錯覚しそうな程に。
そんな大切な人に、言えないことがあるという事実が苦しい。
裏切ったつもりなんてないけれど。
拓海から見れば十分な裏切り行為ともいえる自分の行動を、私はとてつもなく後悔していた。
すれ違って絡まった糸を解くためにかけた電話のはずが、もっと糸を絡ませてしまったかのような感覚に囚われていた。
拓海を信じてさえいれば、大丈夫。
ぐらつきそうな自信を拓海の声を想い出すことで何とか持ち直す。
あの優しい、柔らかい声を思い浮かべながら、ほんの少し仮眠をとるために目を閉じた。