好きより、もっと。



頭を抱えて蹲る。

握りしめていた携帯電話がミシミシと音を立てて、今にも壊れてしまいそうな程だった。

投げつけてボロボロにして携帯を壊すなど容易いことだったが、そんなことをしてしまえば明日アミに連絡する手段を失うことになる。

それだけは何としても避けなければいけないような気がしていた。



無意識に持っていた携帯からカズの名前を呼び出し、そのまま電話を掛けた。

が。

すぐに発信を止めた。




『―――俺はお前『達』がしてやれないことを亜未に与えるだけだ―――』




「・・・クソッ!」




何だって言うんだ。

どうして俺があんなヤツの言葉に振り回されないといけないんだ。


悔しいと思うことは、相手の言っていることが正しいと、図星なのだと認めることに似ている。

認めたくないと俺の気持ちがどんなに反発しようとも、簡単に覆されてしまいそうな、そんな気持ちになる。


カズに連絡を出来ない俺は、大崎の言うことを『その通りだ』と受け入れているのだろうか。




どうすることも出来ない自分の携帯電話を見つめる。

掛けることも出来ない。

電源を切ることも。

ましてや壊すことさえ出来ない。



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