好きより、もっと。
「無理矢理連れて行きてぇな」
そんなことは絶対にしない。
そして、絶対口には出さない。
けれど、気持ちばかりが燻っている。
アミに好かれているのは充分に分かっている。
けれど、その好きの度合いと同じくらい信用されているとは想っていないんだ。
アミは、未だに俺が未央を引きずってると想ってるんじゃないか、って。
たまに想う。
本当は、アミに出逢った瞬間から、俺の未央に対する気持ちが薄れていったのに。
まぁ、それを口に出す事をしなかった俺のせいでもあるんだろうな。
結果として、俺を慰めるためにアミは『一緒にいてあげようか』って言ってくれたんだから。
そう言わせることで、俺も自分で安心したかったのかもしれない。
俺に好意を寄せてくれる女の子が、俺のものになる、というその瞬間を手に入れることで。
俺は『惚れられた』立場でいたかったのかもしれない。
――――――ブーッブーッブーッブーッ。
ブーッブーッブーッブーッ――――――
「ん?」
バイブが響いて、携帯を取り出す。
それにしても、この短いバイブうるせぇな。
いい加減設定し直すか。
ま、鳴ったら絶対確認できるところがイイんだけど。
『着信:高田亜未』
今、脳裏に浮かんでいる彼女が俺に電話を掛けて来ている。
用件は想像がつく。
また、カズがおせっかい焼いてくれたんだろ。
アミ、気付いたんだな。
俺が笑ってなかったの。
ってか、笑えるかっつうの。
自分の彼女のイイ脚を、他のヤローの前で晒してたまるか、っての。
俺が隣にいるなら見せびらかすから、いいものを。
冗談じゃねぇよ。
鳴り続けるうるさいバイブが止まり、留守電の表示が点灯した。
それを見て、すぐに留守電を確認する。
電話には、出られなかった。