好きより、もっと。
無機質な機械音が鳴って、アミの声がする。
『タク。アミです。昨日はごめん。話たいことがあるの。時間空いたら電話下さい。』
いつも凛としているアミの声。
アミは、電話の時だけ感情を隠すのが上手い。
仕事柄、インカムの声で感情を丸出しにする訳にもいかないだろうしな。
声だけはいつも真っ直ぐだ。
不安に震えたり、怯えたり、やけに嬉しそうだったり、という波はない。
その凛とした声からは、何の感情も読み取れない。
「これが、一番不安だよな」
顔を見れば何でもわかるアミ。
ただ、離れて声だけになってしまったら。
俺は、アミの考えている事を読み取ることが出来るのだろうか。
今のように、カズがおせっかいを焼いてくれたことを想像すれば、変な顔文字みたいな『ショボン』とした顔してるんだろうな、とわかる。
そして、今は。
すぐにでもそれを確認しに行ける距離にいる。
それがなくなったら、俺はどうするんだろうな。
アミからの留守電を聞いて、携帯をしまう。
時間ばかりが過ぎて、アミに東京転勤の話は出来ていない。
辞令が出て、一週間。
俺は、まだ動きだせずにいる。