好きより、もっと。
「未希は、そんな風にならないといいなぁ。俺、未希が変な男にひっかかったら、マジでソイツ殴るわ」
「・・・叔父バカ」
「しょーがねぇだろ?未希はマジで可愛いんだから!!!」
カズと未央ちゃんは去年結婚して、長女の未希ちゃんが一ヶ月前に生まれた。
生まれたばかりの赤ちゃんは、美形の『藤澤』の顔を色濃く継いでいた。
カズにそっくりなタクは、自分のことのように喜び、自分のことのように泣いていた。
拓海は、ずっと未央ちゃんの事が好きだった。
それを承知で、私はこの人の傍にいる。
友情と愛情が一緒にやってきてしまったから。
時折、どうしようもない気持ちになる。
自分でも説明のつかない、そんな気持ちに。
ふわりと頭に温かい手が触れて、そっぽを向いていた私はタクを振り返った。
そこには、とても優しい顔をした大好きな人が、私を見つめていた。
「亜末が背中を押してくれたから、未央と和美を祝福してやれたんだ。ありがとう」
この人は。
自分の顔の良さをもう少し自覚して欲しい。
そんな顔で私の名前を呼ばれたら。
『ありがとう』なんて言われたら。
嬉しくてたまらないじゃないか。
「別に。あの時のタクを放っておけなかっただけだから」
「それでも。其処にいたのが、亜末でよかった」
そう言って、タクは私にキスをした。
優しくて、柔らかくて。
拓海そのものみたいなキスに酔いしれて、離れるのが嫌だ、としがみついた。
含み笑いと共に抱き締められた腕の中は、何の不安も感じられない無敵の場所だ。