好きより、もっと。
「こんなにタクのことわかるのは、友達でいた期間があったからだね」
結局、私は大学入学から八年くらい片想いをしていた訳で。
その間ずっと『仲のいい友達』をやってきた。
タクにこの気持ちが伝わらないように、と必死になっていても、私の気持ちがバレる確率の方が高かった。
だから、わざと彼氏を作ってみたり。
いわゆるセフレってやつを作ってみたり、と。
『タクのこと好きではないよ』行動を繰り返していた。
結果、カズに怒られて止めたんだけれども。
その間、気持ちだけは一途にタクを好きだった私は。
それこそ、タクの駄目なところも、誰にも見せていないようないいところも。
ありのままのタクの傍にいた。
だから、未央ちゃんには見せていない必死のタクも。
実は拗ね易いタクも。
ポーカーフェイスの裏に隠れてる、実は感情的なタクも。
私は知っている。
それを、とても嬉しく想っている。
「今更アミに隠す事もねぇしな」
ぶっきらぼうに聞こえるその声が、少しだけ嬉しそうなのを私は見逃さなかった。
でも、それをポーカーフェイスで隠すのは、やっぱり上手い。
タクみたいに、表情に出さずにいられたらいいのにな、と想う。
私は、想ってる事が全部出てしまうから。
「で、大崎さんの声にイライラしてたのはもういいの?」
「別に、してねぇし」
「そ?じゃあ、今日は私が出すよ。待っててくれた、お詫び」
「・・・俺は女に奢らせる程、馬鹿じゃねぇよ」
「じゃあ、ワリカンね」
「ハイハイ。彼女らしく奢られとけ」
意地悪く私の方を見て笑うタク。
未だ、『彼女』という響きに照れてしまう私。
意地の悪いその顔は、心の底から私を信頼している顔だった。
タクが少しでも私のことを好きになってくれた証のようで、嬉しくて照れくさい。
真っ赤になる私の顔を見て満足そうにタクは笑った。
私はそんなタクの笑顔に、また顔を赤らめるのだった。