好きより、もっと。
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家に帰って来ても眠れる訳もなく。
私は、ベットの上で体育座りをしたまま固まっていた。
何が一番失敗したって。
急いでいたせいで忘れてきたタバコだった。
夜中のタバコは、私にとって精神安定剤で。
何か余裕がなくなると、タバコの煙が欲しくなる。
夜の闇に紛れて紫に見えるその煙は、妖しく漂うタクの雰囲気に似ていて。
こんなところでもタクを求める自分が虚しかった。
「何してんだろ」
呟いた言葉は、そのままの意味を持っていて。
何もかも中途半端な自分が情けなかった。
仕事には責任を持っている。
自分の出来るべき仕事が、今の仕事にはある。
必要とされている実感もある。
なのに。
タクの話を聞いた時、想ったことは最低なことで。
それを見抜かれたくなくて逃げ出した。
いや、見抜ている気がして怖くて逃げたんだ。
――――――一緒に付いて行きたい――――――
一瞬でもよぎってしまった。
仕事なんかよりも。
タクと離れたくない、と。
仕事への思いは揺るぎなくて、何一つ変わっていないのに。
結局優先するのは自分の恋愛事情、だなんて。
私は、なんて中途半端なんだろうか。