好きより、もっと。
「しかも。結局、こうだ」
わかってた。
わかってて逃げ出したんだけれど。
それでも、今日くらいは。
「追いかけてくれるんじゃないかって、想ってたのに、な」
結局、タクは追いかけて来なかった。
平日で尚且つもう遅い時間で。
そんな日に、タクが私の家に来てくれたことなんてない。
車で、たった二十分。
付き合って二年半の間、自分で甘えることの出来なかった私がワガママを言ったのは。
『会いたい』と懇願したのは、たった二回だけ。
そして、その二回とも。
タクは私に会ってはくれなかった。
それで、私は諦めた。
タクが私のためにこの部屋に駆けつけてくれることなんてない、と。
辛くなかった、と言えば嘘になるけれど。
それを救ってくれたのが、仕事だったから。
夜中でも、自分の認証キーさえ覚えていれば24時間仕事が出来た。
そのまま朝になったら近くのカフェに逃げ込んで。
みんなが出勤したのを見計らって、会社へ向かう。
私は、何を間違ったんだろう。
タクへの甘え方?
仕事への依存の仕方?
もう、わからないよ。