好きより、もっと。
―――――ピンポーン―――――
持っている携帯をガシャンと落としてしまう程、私は肩を揺らして驚いた。
こんな時間にインターホンが鳴ることはない。
誰かが来る予定だって、ない。
―――――じゃあ、もしかして?――――――
淡い期待を抱きつつも、そんなはずない、と頭が否定する。
染みついたこの感覚は、きっと間違うことなんてないだろう。
今の自分の状態で誰かに会える訳もなく。
私は、誰かが映っているはずのインターホンすら見なかった。
タク以外は、この家に入って来れないし。
この部屋に引っ越して唯一変わったのは。
友達には誰ひとり、鍵を渡さなかったことだ。
今まで世話焼きの性格のせいで、我が家はいつだって駆け込み場所だった。
けれど、友達も結婚をしたり家が遠くなったことも合って、おのずと駆け込んでくる機会が減ったのだ。
だから、もし。
この部屋のドアのカギが回ったら。
それは、タクでしかあり得ないんだ。
――――――ガチャッ―――――
響いた音に、心臓が揺れる。
「・・・タク・・・」
掠れた声で。
泣いたばかり見たいな、そんな状態で。
気付けば玄関に向かっていた。