好きより、もっと。
「アミッ!!!」
リビングの扉が開いて、そこにいたのは。
大声で私の名前を呼んだのは。
紛れもなく、私の愛しい人。
――――――の、弟で。
信じられないくらい綺麗な顔をしたその人の声を聞いて、私はしゃがみ込んだ。
後ろで困ったように笑っている未央ちゃんと、カズ。
私は、もう動くことなんて出来なかった。
「アミッ!!!」
引かれた腕は、タクと同じ感触がするのに違う香りで。
私に触れるその抱き締め方と腕の強さに、嫌でも別人だと気付かされる。
ねぇ。
縋りたいのは、この腕じゃないよ。
ねぇ。
同じようで、全然違うんだよ。
ねぇ。
拓海。
拓海。
今すぐ此処で、私を抱き締めて。
そんな想いが溢れたように、私はカズの腕の中で泣いた。
カズの背中に腕を回す事が出来なくて。
だらんと下がったままの手を、未央ちゃんが握ってくれた。
心配そうな顔で、私の名前を呼んでくれる未央ちゃんを。
それでも妬ましいと想ってしまう私は。
何処まで浅ましいんだろう。
タクの弟に抱き締められながら、タクがとても好きだった女の子に慰められる。
何を考えるにもタクが基準の自分に嫌気がさしながら、結局目の前のぬくもりに逆らうことは出来なかった。
ただ、タクが此処にいない現実が。
私には一番、痛かった。