好きより、もっと。
「はいよ」
『悪ぃ、カズ。今いいか?』
「良くなきゃ出ねぇよ。で、お前アミの電話に出なかった理由は?」
『出れるかよ。今、部長と話してたんだ』
「アミに転勤のことは?」
『・・・言ってねぇ』
弱気な兄貴の発言に、俺は小さく溜息を吐いた。
大事なことは言わなきゃ伝わらねぇし。
そういうことは早く言わなきゃいけねぇってことを。
コイツが一番知ってるはずなのに。
臆病過ぎて、伝えられずにいる。
「お前、また自己完結してから言うつもりだろ?」
『なんだよ、それ』
「アミが言ってた。『タクは自分で考えて、決めた結論しか言わない』って。そこにどんなことを言っても、お前は何も言ってくれない、ってさ」
『・・・そんなつもりは――――』
「なくてもアミは想ってンだよ」
それに俺もアミに同感だ、と伝えると、拓海はまた黙った。
お前のそういうところは、とても残酷だ、と俺は想う。
お前はいつも。
全てを伝えないことで、周りを傷つけずにいたいと想っている。
でも、違うんだよ。
黙ることで。
何も言わないことで。
お前の真意がわからなくて、傷付くヤツだっているんだよ。