好きより、もっと。
「じゃあ、カズくん。アミちゃんをお願いね。私はタク呼んでくるから」
安心したように笑う未央を見て、小さく頷いた。
こんなに安心出来る存在がいることがとても幸せだ、と想いながら。
「ごめんね、未央ちゃん」
「気にしないで。アミちゃんには『お義姉さん』になってもらわないと、私が困るから」
茶目っけたっぷりに言った未央に反論する元気はないのか、アミは力なく笑った。
その顔は複雑そうで、嬉しそうな。
どうしていいかわからない、という顔だった。
未央が玄関を出て行くのを見届けて、アミをソファーへ座らせる。
余程疲れたのか、ぐったりした様子のアミが心配そうに俺の顔を見つめていた。
「なんだよ」
「ごめんね、迷惑かけて。ねぇ、未希ちゃんは?」
「あぁ、お袋ンとこ。ま、しっかり寝てるから当分は大丈夫だ」
「そっか。ほんと、ごめん」
ぼぞぼぞと下を向いて話すアミに、そっと近付く。
その顔を両手で挟んで無理矢理俺の方を向かせた。
アミは、その力に逆らうことなく俺を見つめ、逃げようともしなかった。
普通の女はここで目を逸むけたりするんだけどなぁ。
俺の顔を見慣れているコイツには、なんら恥ずかしいことではないようだった。
こんなに顔を近づけられても動揺しないことに、危機感がなさすぎると苛立つほどに。
アミは、無防備すぎる。