好きより、もっと。



スッと立ち上がってアミの目の前に立つ。

俺を見上げるアミは、タクのことを心配してまだ少し怒った顔をしていて。

ハッとして困ったように笑う顔に変わっていった。

ほんと、表情のコロコロ変わるヤツ。




バチンッ!




「ぃったぁっ!!!!何すんのよっ!」


「無防備すぎるから、戒めだ」


「はぁ!?」




俺を睨みつけて涙目のアミは、デコピンされたおでこを押さえていた。

強くやりすぎたか。

赤くなっちまったな。




「じゃあ、俺ら帰るわ」




文句を言うアミを後目に、未央の手を引いてスタスタと玄関に向かう。

未央が嬉しそうに俺の手を握り返す。

目線を向けると、満足そうに笑う未央が其処にいた。




「和美っ!」




焦ったような拓海の声。

なんだよ、うっせぇな。



振り向くとバツが悪そうな顔をして、俺を見つめていた。

やべぇ。

コイツの顔もやりすぎたな。




「悪かったな」




気にすンなよな。

俺が勝手にやったんだし。



律儀な兄貴に不敵な笑みを浮かべて手を振る。

本当、この二人は手が掛かる。

意地の張り合いなんて、早くやめちまえよ。




「俺は、謝んねぇからな」




拓海を見つめてそう言う。

少しだけ、拓海は笑っていた。



アミの家の重い扉が閉まるまで、拓海は俺と未央を見送ってくれていた。


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