好きより、もっと。



「亜未、どうする?」




緊張しながら私に聞いてくれたんだ。

ちゃんと答えなくちゃ、と想う反面。

ニヤニヤしてしまって、何も言えなくなってしまう。



そんな私の様子に気がついたのか、タクはトントンと背中を叩いてくれる。

私の呼吸に合わせて。

優しく。

ゆっくりでいい、と言う言葉の代わりに。




「三年。俺たちが付き合った期間よりも長いとか、あり得ねぇだろ。踏ん切り付かなかったんだ、アミに言うの」




一人で、悩んでくれてたのね。

今までの私達のこと。

これからの私達のこと。




そうだね。

そんな簡単なものじゃない。

一緒にいる約束をすることも、離れる覚悟をすることも。

そんなに簡単に出来る決断ではないことくらい想像できるはずなのに。

私はその全てをタクに任せっきりにしてしまっていたんだね。



心の底から『ありがとう』と想う。

想ったことを溜めこんで、自分一人で結論を出して。

自分一人で考えてしまうのは嫌だけれど、それがタクだから仕方ない。

考えたこと経緯を伝えることが苦手なタクに、こんなことまで言わせて『ごめんね』とも。




散々泣いた目を自分の手で拭って、真っ直ぐタクを見つめる。

私、この人の何処が好きかと聞かれたら、きっと答えられない。




だって、理由なんてないから。

タクを見つけて、タクに会った瞬間に。


私の中の何かが反応してしまったんだから。



隣にいるカズには目もくれず、それはタクにだけ反応したんだから。


きっと、私の心が。

細胞が。


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