好きより、もっと。
しっかりとメイクを落とし終わって顔を上げると、鏡越しに真剣な顔をしたタクと目が合った。
その目線は有無を言わせ無い強さを持っていて。
私を捉えて離さないものだった。
どうしていいか分からず、でも、目を逸らす事も出来なかった。
「なぁ、亜末」
しっかり私を呼ぶタクは、その場から動かず私を見つめ続けた。
私は、鏡越しに見つめるのが精一杯で、その人に向かって振り向くことが出来なかった。
「・・・なに?」
「約束を、しようか」
「約・・・束?」
「そう。約束」
タクが真剣に言うその言葉に、このまま鏡越しではいけないような気がして。
タオルで顔を拭きながらそっとタクを振り返った。
其処にいたのは。
いつもポーカーフェイスを崩さないはずのその人が、瞳を揺らして不安げな顔をしていた。
「どんな、約束?」
タクがあまりに不安そうな顔をするので、にっこり笑ってタクを見つめる。
そんな顔しなくても、いいよ。
タクのくれる約束なら、どんな事だって受け入れてあげるから。
そんな気持ちを込めて笑った。
タクは少しだけ驚いた顔をしていたけれど、ふわりと笑った。
タクはやっぱりわかってない。
その顔が『無敵』だってこと。