好きより、もっと。
「俺に嘘は吐かない、って約束だ」
タクの表情はとても優しくて、けれどその目の奥が少し怖くもあった。
ただ、怯えるよりもタクに対する怒りの感情が勝って、心の底から笑うことが出来ず作り笑いでその声に応えた。
何よ、その『俺に嘘を吐かない約束』って。
ふざけてるよ。
私がタクに嘘なんて吐くはずないじゃない。
どうせ約束をしてくれるなら『俺は亜末に嘘を吐かない』とか誠実っぽいこと言ってみなさいよ。
ま、言われたら言われたで逆に疑うんだろうけどさ。
ともかく。
一番に私のことを疑うタクに、怒りを覚えない訳にはいかなかった。
「拓海さん、聞いてもいいかな?」
「なんだよ」
「なんで、私が嘘吐くって想うのよ」
「想ってねぇよ」
「じゃあ、なんでそんな約束するのよ!」
「お前、無意識に嘘吐くからだよ」
「・・・は?」
感情を抑えられずに声を荒げた私に、冷静に言葉を告げるタク。
言われた言葉があまりにも突拍子の無いもので理解出来なかった。
無意識に、嘘?
なにそれ。
本気で初耳なんだけど。
ってか、自覚ゼロなんだけど。
「お前、自分の声が嘘だらけって知ってるか?」
「・・・声?」
「そう。お前、俺との電話も仕事の声のまんまなんだよ」
あぁ、そうか。
仕事の声は、私の武装。
インカムで揺らいだ声なんて出せない。
染みついていて、いつの間にか。
タクと話をする時もその声を使っていたんだ。
知らなかった。
それをタクは不安に想っていたのかな?
目の前のタクは、やっぱり少し怖い目をしていたけれど。
少しだけ揺れているのも見てとれた。