好きより、もっと。
「タク・・・」
「ん。ベッド、行こうぜ」
頷くことしか出来なくて、私は手を引かれて寝室へ連れて行かれた。
こういう時って、お姫様だっことかで連れて行ってくれたりするんじゃないの?とか想う暇もなかった。
だって、タクの手が熱くて、強くて。
有無を言わせない力だったから。
それが、とても嬉しかったから。
『好き』という言葉を言ってくれないタク。
タクよりも、絶対私の方が不安だと想った。
完成された男であり、一分の隙もない容姿である拓海。
そんな貴方と離れて平気な女なんていないのに。
溺れるベッドの上でシーツの波も気にせず、私達はお互いの『カタチ』を憶えていようと必死だった。
無数の赤い斑点が私の身体に残り、タクの腕と背中には思い切り爪を立てた。
結局、欲しい言葉は貰えなかったけれど。
その切羽詰まった切ない顔と身体が軋むような腕の強さが、言葉の代わりに『好きだ』と伝えてくれた。
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そして、二週間後。
結局言葉をくれないまま、いつもの『俺、ちょっと出張だから』みたいなノリのまま、タクは行ってしまった。
身体中の赤い斑点は、あっという間に薄くなってしまい。
タクに残った爪痕は、私の知らないところで消えて行く。
それが無性に寂しくて、タクがいなくなった事を実感し始めていた。