好きより、もっと。
「何考えてるんですか、藤澤さん」
ハッとして声の主を見ると、どうにも警戒心を無くさせる笑顔があった。
この人、確か――――――
「プロジェクトマネージャーの廣瀬です。よろしくお願いします」
「藤澤です。こちらこそ、宜しくお願いします」
人の良さそうな顔して、人の観察が得意って顔してんな、コイツ。
童顔ですげぇ、若い。
下手したら俺より下に見えそうだけど、確実に上。
だって、オーラがそう言ってる。
威圧されるような、見下されるような。
そんな空気を纏ってる。
「若いのに仕事が出来るとか。期待してますよ」
「そんな・・・、廣瀬さんこそマネージャーなんて凄いですね」
「あぁ。僕こう見えて三十六歳なんでね。年齢なり、ってヤツですよ」
マジかよ。
その顔で三十六歳はねぇわ。
マジでビックリだわ。
平静を装ったフリをして、内心、信じられないとばかりにポカンとしていた。
元々顔に感情が出るほうじゃないから、バレないだろうな、とは思っていたけれど。
「ポーカーフェイス、上手いですね。でも、動揺が見える。若いね」
「え・・・」
「しかも案外したたかだ。悪くないと思いますよ。『俺』はね」
その笑った顔が、あまりに綺麗でゾッとした。
いや、顔が綺麗とかではなく、纏う雰囲気が凛としている。
その仮面みたいな笑顔の男は、何事もなかったかのように会議室に入っていった。
先が思いやられて憂鬱になったが、その気持ちを振り払うようにその背中を追って行くしかなかった。