好きより、もっと。
―――――――数時間後。
「・・・なんなんすか、あんた・・・」
「へぇ、意外と口悪いんだね。顔とのギャップ、凄いんじゃない?」
「そんなことは、いいッスよ・・・。なんなんすか、この化け物みたいな飲みっぷりは・・・。マジありえねぇ」
「へぇ、それが素の顔かぁ。あんな外ヅラよりずっといいよ」
「そりゃどーも。・・・あー、気持ち悪ぃ・・・」
最初は仕事の話をしていたはずなのに、途中からは何故か飲み比べになっていた。
そもそもの発端は何かと聞かれたら、俺はもう覚えていない。
そうそう酒の飲み比べで負けることのない俺が、もうヘロヘロになっているというのに。
目の前の廣瀬さんは、さも平気な顔をしてまだちびちび酒を飲んでいる。
ちなみに、俺たちはたった二時間程度で、ビール八杯、二合銚子を十二本空けている。
今廣瀬さんが飲んでいるのは十三本目だ。
化け物みたいな人だな、この人は。
「失礼します」
個室のふすまがスッと開けられた。
綺麗に髪を夜会巻きにした、着物の良く似合う女の人だった。
この店はとても感じが良い。
京野菜を中心とした和食に、日本酒は良く合った。
値段がそこそこ張るらしく、若くて五月蝿いヤツは少ない。
料亭、とまでいかなくとも準料亭のような店構えは、和室できっちり分けられた個室がとても落ち着いた雰囲気だった。