好きより、もっと。
拓海がいなくなって、二週間が過ぎた。
忙しいので、いなくなった実感がわかない。
なんてことはなく。
毎日、苦しくなる。
どれだけ好きかを、想い知らされるんだ。
顔を上げることが出来ない私にしびれを切らしたのか、大崎さんは大きな溜息をついた。
その溜息に含まれている感情が怖くて、私は思わず大崎さんを見つめた。
私を見る目は鋭く厳しい。
その眼は、私が仕事に集中出来ていないことを見抜くに違いない。
大崎さんは、そういう人だから。
「高田。今日は帰れ」
「でもっ!!!」
「無理されてたら、こっちが迷惑だ!!そんな状態で、最終の打ち合わせなんか任せられるか!!」
「そんな・・・っ!!!・・・でもっ!!!」
「あとは、カズと準備する。お前は帰れ。これは上司命令だ」
大崎さんは仕事に厳しい人だ。
私の集中力の無さでは『いないほうがマシ』という判断を下しても不思議ではない。
でも、今見放されたら?
私のことをもう一度必要としてくれるだろうか?
有無を言わせない口調で言われて、私はその場に立ち尽くしていた。
その時、ミーティングルームの扉が開いた。
扉を開けたカズは、状況を把握できない様子でその場に留まっていた。