好きより、もっと。



「俺、席外しましょうか?」


「いい、話は終わった」


「・・・て、ません・・・」


「アミ?」


「話は終わって―――――」
「帰れ、と言ったんだ。この後はカズと二人でいい」




冷たい声。

私に目線を向ける気だってない。




「お疲れ様」




突き放された言葉に、何を言うことも出来ず部屋を出る。

扉が閉まった後、ミーティングルームの中からカズの声が聞こえてきたけれど、私はそれを耳に入れることさえ出来なかった。



オフィスで心配してくれたあかねやキヨちゃんに、なんて言って会社を出たかわからない。

なのに、鞄の中には明日必要な資料と、確認すべきリストを詰め込んで退社した。




せめて、『明日はよろしく』と言ってくれたら。

明日は必要だ、って言われてるのと同じなのに。



大崎さんは、そんな言葉をくれなかった。



分かっていた。

仕事に甘さを残してくれるような人で無いから、あの人は課長なのだ。

人に厳しい分、自分でも大きな目標を掲げそれを目指して努力するような人なのだ。


最近、こんな風に突き放されることがなかったから忘れていた。

初めて大崎さんの下に配属された頃、悔しくて怖くてよく泣いたんだった。

期待しているという甘い言葉が厳しさに直結する人。



多分、この会社の誰よりも私を甘やかし、誰よりも私に厳しい人。

カズがいても尚、そのポジションに居続ける大崎さん。

心底尊敬しているからこそ、その人に突き放されたことを受け入れるのは大変なことだった。


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