穴の空いた服


しゃがみこみ穴の空いた服を抱える老人の顔に夏の西日があたる。

なんで、何も言えないんだ。

言うことがあるのに。

その西日があたる顔があまりに中上の父に似ていたもので、中上は「おかえり」も言えずにただ、ただ、涙を流しながら老人を眺めることしか出来なかった。

end
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