「異世界ファンタジーで15+1のお題」二
「ここの人達は、皆、それぞれの絵本を持ってるのかい?」

「……お兄さんはやっぱり間違ってここに来たんだね…」

「どうして?」

「だって…そんな質問をする人なんてここにはいないから…」

「……間違って……?」

私の質問はどうやらとても的外れのものだったらしい。
瑞月は、絵本をながめてはうっとりしたような表情を浮かべて微笑んでいる。



「もしも、私も絵本がほしいと思ったら、私の絵本が買えるのかな?」

「うん。買えるよ。
……でも、今はだめだよ。」

「どうしてだい?」

「決まりだから。」

「なるほど…『決まり』ね…」

彼特有の…いや、ここの住人特有の答え方に、私はそれ以上質問を続けることを諦めた。
どうせ、私が期待するような答えは戻って来ないのだから。



「君はこれ以外には絵本を持ってないのかい?」

「持ってないよ。
新しい本を買うためには、古いのを捨てないといけないから。」

「そうか…
じゃあ、前の絵本はどんなお話だったんだい?」

瑞月は、その言葉を聞くと一瞬にして顔を曇らせた。



「前のお話は嫌い…」

よほどいやな話だったのか、瑞月の瞳には涙がうっすらと滲んでいた。



「すまなかったね。
いやなことを思い出させてしまったんだね。」

「良いんだ…」

「今度のお話は気に入るお話で良かったね。
でも、そんなにいやなお話だったらそれじゃないのを選べば良かったのに…」

「お兄さんは本当になにも知らないんだね。
絵本は選べないんだよ…
いやなお話でも我慢するしかないんだ。」

私には瑞月の言う意味がわからなかった。
ここではそんなことばかりだ。
その違和感に、なかなか慣れることが出来ない。
このおかしな夢は一体、いつ終わりを迎えるのだろう…と、私はうんざりした想いが込み上げて来るのを感じていた。
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