「異世界ファンタジーで15+1のお題」二
「あ…夜が明けて来たね。
お兄さんももうそろそろ行った方が良いんじゃない?」

瑞月にそう言われ窓の外をふと見ると、彼の言った通り、少しずつ空が白み始めていた。



(いつの間に…)

「君は眠らなくても大丈夫なのかい?
眠くないの?」

瑞月はその問いに、ただ、ふふふと微笑むだけだった。


しかし、どこへ行けというのだろう?
あの繰り返しが終わった今、私は次にどこに行けば良いというのか…



「私はこれからどこに行けば良いと思う?」

私は率直に心の中の疑問を彼にぶつけてみた。



「お兄さんを待ってる人がいるでしょう?」



彼の答えは意外なものだった。
私を待っている者…?
思い当たる人は、私には思い浮かばない。



「誰のことを言ってるんだい?」

「……それは、待ってる人が知ってることだよ。」

……またか…
瑞月は、また、訳のわからない言葉で私を翻弄する。



「そうだな。君の言う通りだ。
じゃあ、私は行くよ。」

彼の言葉に苛立ちを感じた私は、立ちあがり彼に背を向けた。



「お兄さん…」

私は振り返ることもせず、本屋の扉を開いた。
清清しいひんやりとした空気が、心地良い。


「お兄さん…ありがとう…」


背中から聞こえたその声に、私は振り向き、小さな瑞月の身体を抱き締めた。
なぜだかわからないが、今までの苛立ちも忘れ、急に彼のことが愛しく感じられたのだ。



「さようなら…お兄さん。」

いつまでも彼を離さない私に、彼がそう呟いた。



「あ…あぁ…さようなら、瑞月…」

手を振る彼に見送られ、私は歩き出した。
あてなどなかった。
ただ、とにかく彼の元から離れなくてはならない気がして、私は路地を抜けあの寂れた商店街を目指した。

当然のごとく、通りにはまだ開いた店もなく閑散としていた。
このままここにいても仕方がない。



(そうだ…喫茶店にでも行ってみるか…)



あの喫茶店がもう開いているという確証はなかったが、ここから歩いてる間には開くかもしれない。
開いてなければ、店の傍で開くのを待てば良いだけの話だ。
それに、あそこへ着くまでには水晶の丘もある。
特にこれといって何もない丘だが、それでもこの商店街にいるよりは、まだマシなような気がした。

商店街を抜け、町外れから水晶の丘へ向かう。
その頃には、空もすっかり明るくなっていた。
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