「異世界ファンタジーで15+1のお題」二
「良いんですよ。
誰にでも思い違いなんてものはあるんですから。
私も久しぶりにこんな所まで来て良い運動になりましたよ。
最近、運動不足だったんで本当に良かったです。」

私がよほど気落ちして見えたのか、帰る道すがら、宿の主人はそんなことを話してくれた。
しかし、私は、気落ちしているのではなかった。
口ではああ言ったが、決して思い違いなどではない。
そのことに確信はあったが、現に喫茶店がない以上はああいうより仕方がないと思ったのだ。

しかし、なぜ…
私の顔を曇らせていたのは、ただ偏にその答えがみつからなかったからに他ならない。



その晩も私は、その宿に一泊した。
ここ最近のことを思い出しながら、大きな月を肴に晩酌の杯を傾けた。
答えを探す事はもう諦めた。
あれが、夢でも現実でも、私の思い出の一つとしてこの胸におさめておくことにしよう…
冷たい風がほてった顔に心地良い…



(素敵な経験をありがとう…)







次の朝、私は宿屋の主人から意外な話を聞いた。

「昨夜、なにげなく親父に町外れの話をしたんですが…お客さん!
驚かないで下さいよ!
あの場所には、以前、本当に喫茶店があったらしいんですよ!
いや~、私もその話を聞いて驚きました。
なんでも、親父がまだ小さい頃、すでにそこの店主は死んで閉店していたそうで、喫茶店は子供達の間では幽霊屋敷なんて呼ばれてたらしいです。
その喫茶店は、親父が、6つか7つの時に取り壊されてしまったそうです。
しかし、なんで、そんな大昔に取り壊された喫茶店のことをお客さんが知ってらっしゃるんでしょうね。
不思議な事もあるもんですなぁ…」

その喫茶店をどういう人が経営していたのか、そんなことは今となってはもう知る者もいない。
なぜ、私がとうに取り壊された喫茶店に行きついたのかも、わかるはずもない。

ただ、はっきりとわかっているのは、あの老主人が喜んでくれたということ。
それだけで良いとしよう…





私は、老主人の少年のようなあの笑顔を思い出しながら、その町を後にした。
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