go way




二人を包む沈黙が流れる。
夜風が二人の間を吹きぬける。


「虐待されててん。知ってるやろ?
身体中の傷。言わんでもわかってるか。
信五と同じ施設におってんから。」


吸っていた煙草を地べたに押し付ける。
その目は遠くを見つめ沈黙を嫌うかのように話し出す。


「俺なずっといい子やないから殴られとると思っててん。せやけど違ったんやな。
あいつらには俺がおもちゃにしか見えてへんねん。熱湯や刃物にバッド。あいつら楽しんどった俺が脅え泣き叫ぶ姿見て生きがい感じとった。傷が1つ2つ増えていくたびに俺は心の中であいつらを殺しててん。俺は心を殺してん。あいつ等みたいにならへんと思っとたのにな。こんな手あるから殴ってしまうんやな。」


凍り付いてく冷たい瞳。
寂しさやを感じさせるより先に
絶望という闇を映しているかのように。





「あああああああ。」



急に大声を上げると共に拳で壁を何回も殴りつける。
拳が赤く染まっていく。










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