go way
勢いよくリビングのドアが開く。
手には花丸のついた絵を持っている博貴。
「ママ。ママ。見てや。」
母親の横には博貴の兄が座り満面な笑みをこぼす。
手には兄の答案用紙。
「僕しかおらへんのやで。」
「すごいね。100点ばっかやね。」
兄貴の頭をなでる母の優しい手。
思わず持っている絵を後ろに隠す。
「博貴。お兄ちゃん見てみん?
すごいで。また100点や。」
嬉しそうな母の顔。
「すごくなんかあらへんよ。
博貴。後ろに何かくしとん?」
博貴の手から絵を取り上げる。
「博貴うまいなぁ~。すごいわ。」
「せやろ~。」
笑顔をみせる博貴。
「こんなことよりお兄ちゃんみたいに
もっと勉強頑張りいや。」
絵を見さえしない母親。
兄の手から絵をぶんどり
クシャクシャに破く博貴。
目には涙を溜めて寂しそうに母を睨む。