go way
二人のいない部屋は重たい空気が流れ。
煙草の煙が虚しさを感じさせる。
俯いたまま地面を見つめる博貴に声をかける裕。
「博貴。」
「うん?」
顔を上げ声がする方へ視線を移す。
「あいつ本気で言ったんやないから。分かってやってや。」
「僕からも頼むわ。」
すばるが出て行った扉を見つめたまま呟く隆平。
「あいつなずっと一人やってん。親の顔も知らんねん。せやからかなぁ。あいつ親の話しされんといつもああや。昔から人に突っかかるわ。殴るわ。ヒステリックになるわ。」
「分っとるよ。僕も言いすぎたわ。」
裕の言葉を遮る。
「博貴も大人になってん。」
「何やって?」
「いや。何もあらへん。」
場の空気を崩そうとワザとふざけてみせる亮。
「博貴の気持ちも分かるで。比べられたら誰やって腹立つし。でもなきっと博貴のこと心配しとるんやと思うで。」
ずっと黙っていた忠義が口開く。
「俺もそう思うわ。俺等みたいなとつるんどるやから余計にな。ほら。大人からみれば俺等って不良に見えるやろ。せやけど俺等は俺等。自分の道は自分で選べばええやん。ダチやってお前が選んだらええ。」
忠義に続き口を開く章大。
「ずっとな。僕を見てて欲しかってん。兄貴なんかやない。俺を見て、その手で抱きしめて欲しかったん。せやからガキの頃はアホみたいに兄貴の真似しててん。いい子に自慢の息子になるように頑張ったんよ。でもな。何かここが淋しいねん。」
寂しそうな瞳の奥。
胸に手をあてる。
「自分を偽りたくなかってん。これが俺やって認めて欲しかってん。せやから兄貴の真似もいい子になろうと頑張るのもやめてん。」
俯く博貴。
その肩は微かに揺れている。