go way
知らない温もり





ザーザー。




大粒の雨がすばるを濡らしていく。
バケツを片手に泣きながら園へと帰ってくる。


「どうしたん?風邪ひちゃうよ。」


タオルですばるの頭をふく先生。
真っ赤な目。
大粒の水が頬をつたう。

「…ボクは…ボクはママやパパに捨てられたん?…みんなが言うんや…。」

先生に抱きつくすばる。
   
「捨てるわけあらへんよ。こんな可愛い子、誰が捨てるん?」

すばるを抱きしめる先生。
  
「せやけど…せやけど…一回も会いに来てくれへん。ボクんこと嫌いなんや。」

声にならない声。
小さい身体を震わせ泣き続ける。
   
「嫌いなわけあらへんよ。すばる君。前に話したこと覚えとるん?」

泣いてるすばるの背中をポンポンと優しく叩く。
   

「遠いとこにおるんやろ。」


顔を上げ先生を見上げる。
   
「そやよ。遠いとこにおるん。そこはむちゃ遠いとこや。せやから歩いては行けへんねん。ママもパパもほんまはすばる君に会いたいんよ。一緒に暮らしたいやよ。せやけどね。どうしても一緒におれへん事情があるんよ。ママとパパが迎えにくるまで一緒に待とうな。」

嘘を隠すため必死に言葉を選ぶ。
すばるを抱きしめる手に力が入る。
  

「…うん…。」


力なく頷くすばる。
   
「すばる君が淋しなったら先生がそばにおったる。」
「ほんまに?」

涙で濡れた顔でニーと笑うすばるに精一杯の笑顔で答える。
   

「ほんまやよ。」
「約束。」


差し出すすばるの小指。
   

「約束。」


答えるように小指を絡ませると
指きりするすばると先生。







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