go way
「なぁ。煙草もってへん?」
ポケットから煙草を差し出すとくわえた煙草に火を差し出す信五。
「なぁ。信五の親ってどない人やった?」
「…。」
一瞬の沈黙。
「わりぃ。お前も同じ施設やったな。」
苦笑するすばるを横目に話し出す信五。
「優しい人やったよ。温かい手しとった。
綺麗なおかんやった。」
空を見つめる信五。
「ええな。記憶にあってん。俺の親は何で俺を生んだやろう?捨てるんやったら生まなかったらええのに。顔も声も温もりも俺に教えてくれんと残された俺にどうしろっていうんや。」
煙草を一口吸うと空へ向かい吐く。
空に消えていく煙の行方を見つめる。
「生きて欲しかってん。すばるに生きて欲しかってん。好きで子供を捨てる親なんておらへん。お前の手放さないとあかん事情があったんやろ。」
視線も変えず話す信五。
「どんな事情にしろ子供を捨てるなんて…。親を恨んだよ。憎んだよ。何で俺を捨てたんやって。でもな今は生んでくれてありがとうって思っとる。お前等に会えたから。そう思えるようになった。」
煙草を地面へと押し付ける。
「僕もすばると同じや。みんなに感謝してる。なぁ。みんなにもその言葉聞かしてやりたい。戻ろうや。」
立ち上がりすばるの腕をひっぱる信五。
「ややわ。断る。」
「何で?みんな喜ぶで。」
立ち上がろうとしないすばるを強引には引っ張りたたせる。
「俺がそんなこと言ったらキモイわ。
ってかお前楽しんでるやろ?」
悪戯に笑ってみせる信五。