go way





「隆ちゃん。おおきぃなって。何年ぶりかしら?」


真っ赤な口紅。
口角をあげる。
   

「よう。顔見せれたな~。」


母親を映す瞳。
濁った目で睨みつける。
   

「そんな怖い顔しんといてや。せっかく会ったんよ。」


鼻を刺す香水の香り。
   
「帰ってや。もう二度と僕の前に顔見せんといてや。」

冷静さを保とうとしているのか静かな口調とは正反対な言葉。
   
「母親にむかってヒドイこと言うんねんね。」

「あんたこと一度も母親やって思ったことあらへん。せやろ。あんたが僕に何してくれたん?勝手に離婚して男つくっておまけに僕を街中に置き去りにして。今頃、何しにきたん?僕のこと捨てたんやろ?」

プツリと糸がきれたのか捲くし立てるように罵声をとばす隆平。
   
「そうや。あんたのこと邪魔で邪魔でしかたなかったわ。父親があんたを連れて行くはずやってん。」

悪気のないから厄介なのか
さらりと酷いことを口にする母親。
   

「帰れや。頼むから帰ってや。」
「そんな顔せんでも帰るわ。お金貸してくれへん?」


財布からお札を抜き取り母親にわたすと背を向ける。
   
「ほな。おおきに。」

ニヤリと笑う。
   

「お前の顔なんて二度と見とうない。はよ。行けや。行けや。」 


母親に背をむけたまま怒鳴り散らす。
お札を鞄へと押し込むと部屋を後にする母親。







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