go way
罪深き十字架
暗い部屋。
閉めきった窓から照らす月。
白い粉。
コップの水とともに飲みほす母親。
手にはナイフ。
焦点の合わない目でナイフをみつめる。
「ママ。ママ。」
母親の服を引っ張る信五。
小さなその手を振りほどく母親。
「ママ?」
ナイフを握りしめている母親。
その目はどこか遠くを見つめ。
「…信五…。」
持っていたナイフを信五の手に握らす。
「ママを殺してくれへん?」
表情のない顔。
ナイフを握らされ震えている信五の姿。
「ねぇ。殺してや。」
信五につめよる母親。
首を振り続け泣きじゃくる。
1歩1歩。
後ずさりをする信五。
「信五の手で楽にしてくれへん?」
「…やや…。」
声にならない声。
首を振り続ける。
震える身体。
壁際へおいつめられる信五。
「こうやって刺すんよ。」
ナイフを握っている信五の手に手を重ね自分へと突き刺す。
肉の裂ける感触。
赤く染まる手。
ナイフをつたい滴り落ちる血。
「ぅぅぅううううわあああああああああ。」
ナイフを握りしめたまま絶叫する信五。
うずくまる母親。
痛みで歪んだ顔。
荒い呼吸。
「…ママ…。」
笑顔をつくる母親。
「…ハァ…ハァ…ハァ…。」
信五の頬に手をあてる母親。
目から流れる涙をぬぐう。
「…もう一度…楽にして…。」
首を振る信五。
「…お願い…死なせて…。」
凍る空気。
時計の音。
信五はナイフを見つめる。
「ゎゎゎわわわああああああ。」
母親にナイフを振りかざす。
赤く染まる服。
母親から流れ出す血が広がっていく。
血のついたナイフを握り締めている信五。
真っ赤に染まった手。
血の海に真っ赤に染まった母親が浮かぶ。
焦点の合わない目の信五。
ナイフを落とす。