go way




   
「なぁ。信五。お前ほんまに人殺したん?」


マジメな表情の亮。
   
「冗談やろ?」

信五を見る忠義。
しばらく黙っていたが信五だがようやく重い口を開く。
   

「…殺した。この手で殺してしまったわ。」



冷たく凍りついた目から流れ落ちる涙。
   
「何でや?」

素朴な疑問を口にする博貴。
   
「“殺してくれ”って言うねん。おかんが僕にナイフ握らして“こうやって刺すのよって…。血がナイフを滴り落ちる…気がついたときには血の海やったわ。」

手を見つめる信五。
   
「おとんとおかん。むっちゃ仲よかってん。せやけどいつのまにか見えない溝が広がってん。おとんは女と酒に溺れおかんは薬に溺れてん。見てられんかった。薬でおかしくなるおかんを。ナイフ握らされて“殺してくれ”って言われたとき拒めんかったわ。おかんが望むことやったから。」

顔をそむける裕 すばる 亮 博貴 章大 隆平 忠義。

   
「せやから僕が殺してん。」


両手を握り締める信五。
   
「ちゃうやん。お前やない。信五は殺してへん。」

信五の肩を抱く亮。
   
「ずっと苦しんできたんやな。一人でずっと。」

信五から視線をそらす隆平。
   

「お前のせいやないで。」
「せや。苦しむことなんてあらへんねん。」
「一人で抱えこまなくてええねん。」
「そのために僕等がおるんやで。」


次々と信五へ声をかける 博貴 裕 すばる 隆平。
   
「これで隠し事はなしや。」

章大の言葉に笑みをうかべる亮 隆平 博貴 裕 すばる 忠義。
   

「ありがとう」


笑いかえす信五。
  



「ひとつ隠してたわ。」


思い出したかのように話すすばる。
   
「何や?」

不思議な顔の忠義。
  
「裕のプリン食ってまったわ。」
「何やって?勝手に食うなや。」

すばるにつめよる裕。
  
「ええやん。」
「ええわけないやろう。お前今から買ってこいや。」

じゃれあうすばるに裕。
   
「もうやめろや。ガキみたいな喧嘩。」

すばると裕の間を割ってはいる隆平。







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