明日も晴れ

こうして一緒にカラオケに来ても隣り同士に座るけど、必要以上にくっついたりしない。理由はわからないけど、必ずひとり分ぐらい空けて座る。



『こっちにおいで』と今泉君が言うならくっついて座ってもいいんだけど、言わないから座らない。



自分からくっつくなんて考えられないし、手を繋ごうなんて思えない。
偶然なら……、ねえ?



だって、軽い女だと思われたくない。



今の関係は悪くないと思ってるし。
所構わずべたべたしたり、いつも束縛されているよりもずっといい。



仄暗い小さな個室で、マイクを握る今泉君の腕に浮き上がる筋肉。華奢なくせに生意気だと感じてしまうのに、目が離せない。



今泉君が歌う曲はロックからバラード、アニソンからボカロまで幅広い。疎い私には知らない曲もあるけれど、聴いているだけでいい。



「芳田さん、歌わないの?」

「うん、私はいい。聴いてるから好きなだけ歌って」

「じゃあ、あと一曲。そろそろ時間だし」



ストローを口の端に咥えて、今泉君が笑う。



この顔、実は結構好き。



だけど、絶対に言ってやるもんか。



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