明日も晴れ

「お父さんは休みだけど行かないよ、人ゴミが嫌いだから。ここから音だけ聴いてるよ」

「音だけって、全然花火じゃないし」



くすっと笑って、母はそっぽを向いてしまう。



母は朝早く出勤し、父は夜遅く帰宅する。二人ともすれ違いのような生活をしているし、顔を合わせても素っ気ない態度。



だけど、母は寂しいんだと思う。
父にもう少し優しくしてほしいと思ってる。最近、そんな風に感じられてしまう。



「明日、浴衣着る? 中学の時に作った浴衣があるでしょ?」



自分から注意を逸らそうとしているのか、母が唐突に言った。



「あ、そういえばあったかも」

「何? 忘れてたの? せっかく作ったのにまだ二回ほどしか着てないから勿体ないでしょ」

「うん、どうしようかなあ……」

「後で出しておくから、髪ぐらい、ぱっぱと纏めておけばいいし」



母には私の悩みなんて全くわからないらしい。私が悩んでいるのはそんなことじゃなくて。



浴衣なんて着て行ったりしたら、いかにも気合い入れてきましたと思われそうで恥ずかしいということ。






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