明日も晴れ

「高校最後なんだから着て行きなさいよ、友達にも浴衣着ていくってメールしたら?」



高校最後という言葉が、重く圧し掛かる。何気に母は言ったつもりだろうけど、何にも考えずに言ったつもりだろうけど。



今泉君と花火に行くのは、これが最後かもしれない。



今泉君は私よりずっと頭がいい。
クラスだって国公立受験コースの一組だから、もちろん国公立の大学を受験するに決まってる。隣りの市内に国立のH大学はあるけど、今泉君の志望校ではないかもしれない。



そもそも今泉君の志望校なんて尋ねたこともないし、私の志望校だって話したこともない。



やっぱり今泉君とは、この夏が最後になるのかもしれない。



「浴衣着ていく。着付けはどうしたらいい?」



最後ならいいかな。気合い入れてきたと思われても、恥ずかしくても、どう思われてもいいかな。
どうせ最後なら。



「お母さんでもできるよ、上手じゃないけどね」

「うん、はだけなかったらいいよ」



母は大きく頷いてくれた。




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