明日も晴れ
今泉君なら上京して、もっとレベルの高い大学へ進学することだってできるはず。
それなのに、敢えて『自宅から通える』という第一条件を設定したのはなぜだろう。
ずっと隠していた私の欲が、ゆっくりと顔を覗かせる。うずうずと尋ねたい気持ちを抱えて。
第一条件を決めた基準は何?
もし少しでも、私のことを考えてくれていたのなら嬉しいのだけど。
「今泉君は下宿とか、一人暮らしすることとか考えなかったの?」
欲が頭をもたげて、邪な気持ちをいっぱいに満たして、こちらを見つめてる。なんとかして今泉君の口から望む答えを聴きだそうとしているのは明らかだ。
さて、今泉君は何と答える?
「それはなかった、下宿なんて勿体ないし……、『鶏口となるも牛後となるなかれ』だと思ったから」
きゅっと口角を上げて、今泉君がグラスを握る。握った指の線の細さとは対照的に、浴衣の袖口から伸びた腕は筋張っていて逞しい。
自信に満ちた今泉君に恐れをなしたのか、私の欲が心の奥底へと沈んでいく。代わりに浮かび上がってきたのは安心感。